原点回帰ウォーカーズ 森田季節/MF文庫J

 “十哲”と称される一芸のみに秀でた奇人集団の“薄っぺらさ”を見せられたときには正直戸惑い隠せなかったが、読み終わってみれば前作・前々作同様、自分が望む結果に何度でもトライし続ける女の子の物語。「ビター・マイスィート」のように都市伝説的なホラー風味に味付けしようと本作のように永劫回帰の無限ループに囚われるSF的技巧をこらそうと、森田季節の本質は想う相手への少女の汲み尽くせぬ情念の深さに尽きると俺は理解するのだが、その熱さは今回読者にうまく伝わったのかどうか。フィクションの中で登場人物がフィクションを自覚的に再帰させてゆくという手法は他には野阿梓「兇天使」等が思いつくが、ライトノベル界隈ではあんまりお目にかかることはないのではないか。
 描く照準を少年少女にぴたりと当てながら、その技倆の高さ・器用さゆえにライトノベルの主要読者層に手を取って貰いにくくしているのではないだろうか(〜1/25大阪屋週間ランキングで249位は1月発売されたMF文庫Jの中では最低)。人気感想ブログの意外な低評価もその感を強める。
 
 (本書の感想・書評)
   ・だい亜りー(1/26) カサブタをとったあと待ち受けるのは、濃縮されたとても濃厚なエキス
   ・副長日誌(1/27) 制約抜きでやらせたら、更にすごいものを書くんじゃなかろうか。
   ・Grippal Infekt(1/8)  ここまで説明するともうこういうのが好きな人は一も二もなく食いついてくれることと思う。

原点回帰ウォーカーズ (MF文庫J)

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兇天使 (ハヤカワ文庫JA)

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