2008年下半期ライトノベルサイト杯既刊部門

 2008年下半期ライトノベルサイト杯の既刊部門に投稿する。
 この催しの趣旨は「まだ他人が読んでないだろう本を互いに紹介しあう」ということにあると理解している。けれど狭いライトノベルの枠の中では話題作は大概投票上位に来て新鮮味に欠ける結果になってしまうことに不満がある。そこでライトノベル外のレーベル中心に勝手にラノベ読みが読んだらいいなと思った物をピックアップしてみた。
【08下期ラノベ投票/既存/9784309463087】

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

 作者も言うように、SFであり青春小説でありさらにミステリの要素も兼ね備えている。特に最後の1頁は私的に「史上最高のどんでん返し」だった。
【08下期ラノベ投票/既存/9784150116729】
独裁者の城塞 新しい太陽の書 4 (ハヤカワ文庫SF)

独裁者の城塞 新しい太陽の書 4 (ハヤカワ文庫SF)

 ここで取り上げた中で最もリーダビリティが低いと思うが、まぁセヴェリアンの成長小説と読めないこともないので堪忍しておくれやす。夢とも神話ともつかない世界でセヴェリアンとともに読者も途方に暮れることは確実。だけど細流が大河に合さっていくようにやがて見えてくるその視界の途轍もない広さに読書の醍醐味を再確認できるだろう。
【08下期ラノベ投票/既存/9784087463248】
マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

 前2作同様これも復刊。18年前の世界から「あこがれのお姉さん」だった少女が主人公の前に出現したところから話は始まるのだが、そこから主人公が過去へと飛んでしまうので容易に恋は始まらない。だが主人公が飛んだ先の1937年の東京が克明に再現されている様子に堪能させられる。前年2.26事件で非業の死を遂げた高橋蔵相の導きの結果、好景気を謳歌する東京は必見の価値あり。昭和戦前期の「暗い」イメージを払拭するには最適。
【08下期ラノベ投票/既存/9784198507954】
屍竜戦記〈2〉全てを呪う詩 (トクマ・ノベルズEdge)

屍竜戦記〈2〉全てを呪う詩 (トクマ・ノベルズEdge)

 1巻では竜と戦う使命を負った主人公達の外側にあった人間同士の陰謀劇が、2巻では主人公が積極的に関わる主題として描かれる。それは救いようのなさと主人公達の苦悩をより巧みに描く方向でテーマを深化させるのに成功している。竜同時の戦闘以外には、脂ぎった陰謀家、うろつきまわるゾンビというように「萌え」要素を一切描かないベテラン米田仁士によるイラストも作品の雰囲気にマッチしている。
【08下期ラノベ投票/既存/9784048674294】
さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)

 最後は本来のラノベから昨年1年の感謝をこめてセレクト。互いのまわりをグルグル回るような少年少女のもどかしい恋模様を堪能させていただいた。本年はどんな新しい展開を見せていただけるか杉井氏に期待。