ライトノベルは衰退どころかまだまだこれからだと思う

 前エントリにかこつけて↓最近少し話題の「ライトノベルは衰退するか」の議論について一考。
 『ばけらの!』はライトノベル界衰退の兆しなのか、 - 星ぼしの荒野から(8/26)
 なぜ『ライトノベル業界が危ない』と言われるのか考えてみる 平和の温故知新@はてな (8/31)
 ライトノベルが衰退するかはわからないが変化はしている、エロい方向に ウィンドバード::Recreation (9/7)
「ぶよぶよカルテット」のように扱いが難しそうな音楽*1という題材に取組む意欲的な作者がおられる限り、当分「衰退」なんてことはあり得ないと考えます。考えてみれば、現存レーベルで最古のものでも20年にしかならないライトノベルに比べてはるかに歴史と蓄積のあるジャンルは他にいくらでもあるじゃないですか。SF・ファンタジー・ミステリといった黎明期からの近接ジャンルは言わずもがなですが、文学・音楽といった広義のエンタテインメントさらには心理学・経済学・数学etc.*2といった学術領域にまで目を向けると未踏の沃野がまだまだ広がっていると思います。漫画(例えば、料理で「きのう何食べた?」(よしながふみ)や菌学で「もやしもん」(石川雅之*3)と対照すれば、ライトノベルのジャンル越えはこれからという所ではないでしょうか。
 最近の供給者側の動きに目を向ければ、本作のみかづき氏が美少女文庫から招かれたり、レーベルの増加により筆達者な作家(例えば杉井光氏)の執筆機会が増えたりすることは、ジャンル越えを促進しこそすれ逆に働くことはないと思います。杉井氏の「ばけらの!」のようなメタと称される作品もライトノベルの間口を広げるという意味で個人的には歓迎しているのですが。物理学の初歩知識をガジェットとしてライトノベルに持ち込んだ大西科学氏や「ヒロインの描写と、もう一方の作者の趣味100%である”居合い”についての内容が全体の80%(推測)を占める」(積読を重ねる日々)という舞阪洸氏の試みも全面的に然り。  
 ですからそれらの動きにインセンティブを与えるために、需要者側である読者が自覚的であるべきではないでしょうか。個人的には自分の好みにあわないのを理由にdisるは今後慎もうと思います。大事なのは、自閉せず貪欲にかつ謙虚に様々なジャンルに興味を抱き続けること。

*1:過去の例は判りませんが、現時点で刊行しているものとして本作と「ピアノソナタ」しか寡聞にして知りません。作品中での選曲・描写にセンスが要求される点などから「ハードルが高そう」という印象を持ったわけですが。

*2:アメリカではテレビドラマNumb3rsで本格的な数学を使った驚異的な謎解きを扱っていましたね

*3:モーニング系しか読んでない……